↓ 塗料の種類
↓ 塗料の性能について
↓ 下地調整材・下塗材・中塗材・上塗材の特徴
↓ 上塗材の種類
↓ 色々な機能を持った塗料
塗料の種類
塗料の種類は非常に沢山ありまして、建築塗装で使用する塗料の種類をを今思いつくものを挙げてみますと、
合成樹脂調合ペイント
合成樹脂エマルションペイント
フタル酸樹脂塗料
アクリルラッカー塗料
アクリル樹脂塗料
アクリル樹脂エマルションペイント
アクリルシリコン樹脂塗料
ポリウレタン樹脂塗料I
ポリウレタン樹脂塗料II
フッ素樹脂塗料
エポキシ樹脂塗料
塩化ビニル樹脂塗料
薄付け仕上塗材
厚付け仕上塗材
複層仕上塗材
石材調仕上塗材
これほど様々の種類の塗料があります。
塗装という業種に携わっていない方々には上記の塗料の種類だけでも、各塗料の違いや用途等を把握をすることは困難ですが、これらの種別から、さらに水性・溶剤・弱溶剤というように分かれ、それからまた一液型・二液型というように細かく分かれています。廃盤になるもの、新規で追加されるものなどもありますので、実際のところ、現在何種類の塗料があるのか、私自身も完全には把握ができておりません。
ただし、上記の種類の中でも戸建の塗装工事で使用する塗料は、比較的決まったものを使用する事が多いため、その塗料を中心に話をしていきたいと思います。
外壁塗装・屋根塗装で使用する塗料
戸建の塗り替えで使用する塗料は、大きく分けて「アクリル」「ウレタン(ポリウレタン・アクリルウレタン)」「シリコン(アクリルシリコン)」「フッソ」の4つになります。そして、これらの塗料は水性・弱溶剤・溶剤という種類で以下のように分かれます。
今回の仕分けはエスケー化研の製品を参考に行っておりますが、僅か4つの樹脂の違いだけだった塗料が最終的には20種類に分かれてしまいました。
また、この20種類の塗料が弾性タイプと硬質タイプの2通りに分かれ、機能別や塗膜形成時の反応別に、まだ細かく分かれまして、最終的には52種類の塗料に分かれています。
エスケー化研の「アクリル」「ウレタン(ポリウレタン・アクリルウレタン)」「シリコン(アクリルシリコン)」「フッソ」塗料だけで、4種類から52種類に分かれていますので、他社メーカーの「アクリル」「ウレタン(ポリウレタン・アクリルウレタン)」「シリコン(アクリルシリコン)」「フッソ」塗料まで考えますと、一体何種類の塗料があるのか検討もつきませんね。
このように様々な塗料が戸建ての外壁塗装・屋根塗装に使用されているのです。
塗料の性能について
上記の仕分け表を見てみますと、ある程度規則的に分けられているのがわかります。
参考にアクリルシリコン樹脂の箇所を見てみますと、
- アクリルシリコン樹脂塗料(溶剤タイプ)
- 弱溶剤アクリルシリコン樹脂塗料(弱溶剤タイプ)
- 水性アクリルシリコン樹脂塗料(水性タイプ)
まず溶剤・弱溶剤・水性という塗料の種類別に分かれ、次に1液形・2液形というように分かれています。
それぞれの塗料は、
- ・匂い(臭気)
- ・塗膜性能
に違いがあり、それぞれに得手不得手があります。
まず匂いに関しては、 水性 > 弱溶剤 > 溶剤 という順番で最も水性が優れています。
塗料の性能では、 溶剤 > 弱溶剤 >水性 という先ほどと逆の順番になります。
基本的に塗料は同じ樹脂(同グレード)の場合では、溶剤タイプの塗料の方が、水性タイプの塗料よりも性能が優れている、といった特徴があります。
※近年では研究も進み、非常に良い性能を持った水性の塗料が沢山開発されておりますので、以前ほどの性能差は少なくはなってきているようです。
次に1液形・2液形の違いです。
- 1液形 塗料単体で使用出来るもの
- 2液形 塗料に硬化材を加えて使用するもの
このような違いがあります。
2液形の塗料は、各塗料に決められた配合比率というものがありますので、その分量を正確に測って配合しなければ塗料性能が発揮できないという特徴がありますので、作業性に関しましては単体で使用できる、 1液形 > 2液形 となります。
しかし性能に関しましては作業性は悪いですが、 2液型 > 1液型 ということになります。
アクリル樹脂を使用した塗料の比較
以下の表はアクリル樹脂を使用した塗料で、溶剤・弱溶剤・水性の性能の違いです。
「建築知識」2001年12月号増刊 より掲載
少々古い内容になりますので最近の塗料にあてはまるかどうかは少々「?」の部分もありますが、一般的な溶剤・弱溶剤・水性による塗料の性能の違いがわかるのではないかと思います。
1液型・2液型の性能比較
以下の表はポリウレタン樹脂塗料の1液形・2液形の性能の違いです。
「建築知識」2001年12月号増刊 より掲載
2液型は◎が多いのに対し、1液型は少ないことがわかるかと思います。
今回参考に紹介した表はどちらも少々古いため、現在の塗料ではこの違いがどうなっているかはわかりませんが、先の溶剤・弱溶剤・水性の性能差は近年無くなりつつあるのに対し、1液形・2液形の性能差は未だにまだありますので、塗料性能を求めたい場合などは2液形の塗料を選ぶようにすると良いです。
下地調整材・下塗材・中塗材・上塗材の特徴
塗料は大きく分けて、下地調整材・下塗材・中塗材・上塗材に分けることができるのですが、それぞれの使用目的を外壁塗装の工程に沿って説明したいと思います。
※今回の行程は高弾性仕様(6工程)での説明となります。
工程1 【下地調整】 表面に細かなクラック、またはピンホール等が全体的に生じている場合や、劣化により表層が凹凸になっているような時に行う工程。 下地の状態が良い場合は省かれることもある。 |
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工程2 【下塗】 中塗材・上塗材をの密着力を上げるために、下地をしっかり固めるための工程。 シーラー(またはプライマー)と呼ばれる塗料、色はクリヤータイプ、もしくはホワイトタイプの二通り。 |
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工程3 【中塗 1回目】 模様つけ・弾力性付与・断熱性付与などの機能的な付加価値をもたせる場合に行われる工程。 中塗の工程数はそれぞれの塗料により違うが、通常は2工程行うことが多い。 |
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工程4 【中塗 2回目】 模様つけ・弾力性付与・断熱性付与などの機能的な付加価値をもたせる場合に行われる工程。 中塗の工程数はそれぞれの塗料により違うが、通常は2工程行うことが多い。 |
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工程5 【上塗 1回目】 耐候性・遮熱性などを付与する工程。 ※吹付材等の一部では、上塗の工程で塗装に模様をつけを行うものもあり。 |
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工程6 【上塗 2回目】 耐候性・遮熱性などを付与する工程 ※吹付材等の一部では、上塗の工程で塗装に模様をつけを行うものもあり。 |
塗装の仕様によっては、2工程・3工程で仕上げる塗装などもあります。戸建の外壁塗装では3工程というものが最も多く、下地の状態によって下塗工程を1工程追加した4工程で施工することが多いです。屋根やその他の部位の塗装に関しましても、通常3~4工程で施工を行います。
上塗材の種類
近年では上塗材はひと昔(5年程度前)に比べ非常に増え、安価なアクリル樹脂系の塗料から、耐候性が非常に長い無機・有機ハイブリット塗料、他には遮熱や断熱性能を向上させた塗料や光触媒を利用した塗料までありますので、以前に比べ選択の範囲が広がり目的に沿った塗料を選ぶことが出来るようになりました。
アクリル樹脂系塗料
費用が最も安いため、様々な状況で使用されている塗料になります。近年では戸建の新築時には外部では使用される事は少なくなりましたが、マンション等(RC造)の新築、学校などの改修工事では、未だに多く使用されている塗料になります。
費用は安いですが耐久性はあまりありません。※6~8年程度がメーカー発表の期間になります。
「代表的なアクリル樹脂塗料」
関西ペイント アレスアクアグロス |
日本ペイント ケンエースGⅡ |
ポリウレタン樹脂塗料
アクリル樹脂系塗料の上位グレード。戸建の外壁塗装では外壁・屋根に使用することは少ないですが、雨樋や破風板など付帯部の塗装に用いられます。費用に関しましても高い部類に入るわけではなく、また耐候年数も8~10年と割りと長い塗料です。
「代表的なポリウレタン樹脂塗料」
関西ペイント セラMレタン |
エスケー化研 クリーンマイルドウレタン |
日本ペイント ファインウレタンU100 |
アクリルシリコン樹脂
一般的にシリコン塗料呼ばれる塗料は、概ね、このアクリルシリコン樹脂塗料になります。戸建やマンションの外壁塗装行う上で最も多く使用されている塗料グレードです。アクリルシリコン樹脂塗料は塗料によっての性能の差が非常に大きく、8~10年程度(ポリウレタン樹脂程度)の耐候性を有するものから12~15年程度の耐候性を持っているものまで様々あります。
塗料の価格差も非常に大きく、一缶あたり数千円程度で購入できるものから数万円掛かるものまで様々です。
「代表的なアクリルシリコン樹脂塗料」
関西ペイント セラMシリコンⅡ |
エスケー化研 クリーンマイルドシリコン |
日本ペイント ファインシリコンフレッシュ |
フッ素樹脂
アクリル樹脂塗料の3倍程度の耐候性を持った塗料です。期待できる年数は15~20年と非常に長く、長期間メンテナンス不要を可能にする塗料の一つになります。ただしこの塗料は建物の形状によっては不向きな場合もありますので、使用の際には少々注意が必要です。
「適している建物の構造・部位」
建物を構成する部位に木部・鉄部などが無いRC造(鉄筋コンクリート)・PC造(プレキャストコンクリート)など。スレート瓦などの屋根材。
「適していない建物・部位」
建物を構成する部分に木部や鉄部、シーリング等が多数見られるような構造。木造の外壁など。
木部・鉄部に関しましては劣化が早いためメンテナンスを定期的に行うことが必要になります。たとえフッ素樹脂塗料が長期間メンテナンスを行わなくても良い塗料だとしても、建物全体での劣化のバランスを考えた上で検討をすると良いです。
「代表的なフッソ樹脂塗料」
関西ペイント ムキフッソ |
エスケー化研 クリーンマイルドフッソ |
日本ペイント ファイン4Fセラミック |
色々な機能を持った塗料
ナノ・ハルスハイブリッド塗料
ナノ・ハルスハイブリッド系塗料はフッソ樹脂塗料に近い耐候性を持つ塗料や、防汚染性に優れた機能を加えられたような塗料になります。
ナノ系の塗料は、シリカと呼ばれる成分を主体にして塗料が構成されています。
ハルス系の塗料は、アクリル樹脂をハルス(光安定剤)を合成させたもので塗料が構成されています。
ナノ系・ハルスハイブリッド系の耐候年数は15年程度となります。
「代表的なナノ・ハルスハイブリッド塗料」
水谷ペイント ナノコンポジットW |
エスケー化研 アートフレッシュ |
菊水化学工業 ナノ ペイント |
有機・無機系ハイブリッド塗料
無機の劣化しないという特徴を取り入れた塗料になります。最大の特徴は最も耐候性が高いことになりまして、フッソ樹脂塗料をはるかに超える長い期間、塗膜性能が期待できるという優れた塗料になります。
耐候年数は20~25年となっており、アクリルシリコン樹脂塗料の2倍程度の期間の耐候性を有しています。また費用は高額ですので、外壁塗装で使用されることはまだ少ないですが、最先端の塗料の一つです。
「代表的な有機・無機ハイブリッド塗料」
菊水化学工業 スーパー無機ガード Z |
日本ペイント アプラウド シュアラスターMK |
防水型塗料
塗膜に防水性を付与した塗料になります。
「塗装」=「防水」 と思われがちですが、通常の塗膜の性能は防水性能というよりも撥水性能で下地を保護しているものが多く、完全な防水とはいえない塗料が大半を占めています。
防水型と呼ばれる塗料は塗膜を構成している主材と上塗材が弾性で、特に主材の弾性性能が高い塗料がより高性能の防水機能を備えている塗料となります。
また塗膜の弾力性能は弾性タイプと高弾性タイプの二つに分かれており、高弾性タイプのほうが弾力性能が高いため、通常の弾性タイプよりも防水機能が高くなります。
RC造(鉄筋コンクリート)や木造モルタルの外壁などクラックが発生しやすい外壁に適した塗料です。
費用は主剤と上塗材との組み合わせにもよりますが、塗装の中でも高額な部類に入ります。
「代表的な防水型塗料」
エスケー化研 レナエクセレントA (高弾性塗料) |
日本ペイント DANエクセル中塗J (高弾性塗料) |
遮熱・断熱塗料
ここ数年で非常に話題に上がるようになった塗料になります。耐候年数はアクリルシリコン樹塗料と同等程度となりますが、その耐候性に遮熱や断熱といった機能を加えられた塗料となります。
塗料性能自体は非常に優れておりますが、建物の構造によっては効果が半減したり、あまり感じられない場合もありますので、使用する際には少々注意が必要です。
エスケー化研 サーモシャット工法 |
日進産業 ガイナ |
光触媒塗料
防汚染性能は現在の塗料の中では最も優れている塗料です。光触媒塗料は下塗~上塗までの一連の工程を行いまして光触媒の効果を発揮するカラーコートと呼ばれる製品と、コーティング材単体としての製品の2通りの種類があります。
外壁に付着した汚れを光を利用して分解し、雨で洗い流すことにより、外壁を長期に渡って綺麗な状態を保つことが可能な塗料になります。
カラーコートと呼ばれる製品の耐候年数は15年程度(または20年程度)。
コーティング材の耐候年数は、下地(塗膜)の耐候年数と同じ年数となります。
「代表的な光触媒塗料」
TOTO ハイドロテクト カラーコート ECO-EX |