下地処理の重要性
外壁塗装など塗り替え工事を行う場合は、新築時から10年程度経っておりますので、ある程度下地に劣化の症状が生じていることが普通です。そのような劣化は適切な方法で処理・補修を行ってから塗装を行うことが重要ですが、この下地処理・下地補修というものは塗装を行ってしまえばどのような方法で行われているか確認することがまず不可能。本来この工程は非常に重要な工程ではありますが、実は施工業者からすると以外に軽視されがちな工程になります。
塗り替え後は新築時の様に綺麗に見える状態でも、きちんとした処理が行われていない場合では、数年後塗膜剥離やクラックの処理不足から起こる漏水等の問題が発生したりすることも十分に考えられますので、将来そのような事にならないためにも、ここで下地処理の方法や目的を重要度に分けて紹介していきたいと思います。
工法の選定について
外壁に入っているひび割れ一つをとっても発生した原因を突き止めないことには、最適な処置を行うことは困難ですので、まずは原因究明を行い、その後、補修箇所にどのような効果を期待するかを検討し、最終的に施す工法の決定を行います。
・原因の究明(収縮によるひび割れか、動きで発生したひび割れか・・・)
・期待する補修効果の検討(ひび割れ再発時に対応できる処理を行うか否か、耐力壁のため強度優先の補修をするか・・・)
・工法の決定(シール工法orUカットシール材充填工法or低圧注入工法)
たった一つのひび割れでも「原因」と「目的」によって補修方法は変わってきますので、単純に埋めれば良いというものではありません。どのように直して何を期待するのかということが、下地補修を行う上では非常に重要となります。
以下は、外壁に発生している症状の例(ひび割れの例)工法選定に至るまでのフローチャートです。
このような事を踏まえ工法を決定することが、塗装工事においては大事なのです。
大事なことなのでもう一回言いますが、
クラックは単に埋めればいいというものではありません。
重要度☆☆☆ 漏水に繋がる下地処理・下地補修
後に問題が生じる恐れのあるため、適切な補修を行う必要があります。
外壁 ひび割れ(クラック)処理
クラックの処理方法は主に数通りありますが、通常よく行われる工法は以下の3通り程度になります。
シール工法
小さなひび割れなどの処理に適した工法。
ひび割れの表面をシーリング材や微弾性フィラーと呼ばれる材料で埋める補修方法。
表面のみの処理
Uカットシール材充填工法
比較的大きなひび割れに行う工法。
外壁をカットした後に内部にシーリング材を充填し外壁を復元。
ひび割れ再発の恐れがある場合はこちらの工法が理想的。
低圧注入工法
耐力壁など構造上重要となる壁のひび割れを補修する工法。
ひび割れに低圧でエポキシ樹脂を注入して接着させ補修する。
外壁 シーリング打替
シーリング
サイディング、ALC、プレキャストコンクリート(PCa)、鉄筋コンクリート(RC)とさまざまな構造の建物で使用されています。シーリング劣化や施工品質によっては漏水に繋がる原因になりますので、外壁塗装を行う際には適切な施工が求められます。
屋根(平型スレート・コロニアル・カラーベスト) 縁切り
縁切り
平型スレート瓦(コロニアル・カラーベスト・アーバニー等)は塗装後の縁切りが必要不可欠となります。適切に施工がされていない場合は漏水・屋根下地の腐食等起きる可能性がありますので、平型スレート瓦を塗装する際には重要な項目(工程)になります。
重要度☆☆☆ 塗膜剥離に繋がる下地処理・下地補修
素地調整 ケレン・目荒し(足付)
素地調整 ケレン・目荒し(足付)
塗装を行う下地に錆の発生や脆弱な塗膜ある場合は、ケレンを行う必要があります。また、比較的きれいな状態であっても、塗装を行う前には表面に細かな傷を付ける目荒し(足付)と呼ばれる作業を行っておかないと、密着が悪くなってしまい、剥離しやすい塗膜になってしまします。
高圧洗浄
高圧洗浄
ケレンと同様に、塗装を行う前処理の工程となります。汚れが残っている状態の上に塗装を行ってもきちんと密着しないため、汚れは高圧洗浄で綺麗に洗い流しておく(除去する)必要があります。また、チョーキングと呼ばれる塗膜が劣化した粉状のものも高圧洗浄で除去することが可能です。
重要度☆☆~☆ 美観に関係する下地処理・下地補修
ブリード処理
ブリード処理
現在はノンブリード型のシーリング材が主流になってきましたのでブリードは少なくなってはきましたが、以前のシーリング材がブリード引き起こしているような場合は、ブリードを押さえる処理を行う必要があります。必ず行わねければいけないということはありませんが、「美観」的なことを考えますと行っておいたほうが良いでしょう。
パテ処理
パテ処理
ブリード同様「美観」的な下地補修となります。段差等の凹凸をパテで処理することにより、塗装後の仕上がりが非常に良くなります。パテにもさまざまな種類がありますので、適切な材料を使用して行わなければ、変えって悪くなることも十分に考えられますので、その点注意が必要です。
隙間処理
隙間処理
これもパテ同様「美観」的な下地補修となります。下地補修の段階で行わない場合は、仕上げ後手直しとして隙間を処理することもありますので、工程の順番は施工業者によってさまざまです。隙間はシーリング材で処理することが多いですが、その際、シーリング材はノンブリードタイプを使用しなければ、2つ上のブリードが起きてしまします。
配管カバー等の撤去・復旧
配管カバー等の撤去・普及
配管カバーや配線などを外壁と一緒に塗装を行うケースもあるようですが、理想は外せるものは外してから塗装を行っておくと、後にカバーを外すことになった際にも、以前の塗装が出てきませんので目立たなくすることが可能です。手間は掛かりますが、綺麗に仕上げようと思えば必須の内容になります。
重要度☆☆☆~☆ 上記以外の下地処理・下地補修
袖瓦 釘打ち直し
袖瓦 釘打ち直し
瓦を固定している釘が腐食している場合などは、塗装工事の際に交換しておくと安心です。交換する際にはステンレス製の釘を使用したほうが腐食に強いため良いでしょう。
板金固定釘 打ち直し及び漏水対策
板金固定釘 打ち直し及び漏水対策
屋根の板金を固定している釘が浮いている事がありますので再度打ち直し、もしくはビスに交換など行っておくと台風時の強風にも安心です。釘穴から水が入って下地の木材が腐食することもありますので、釘の上部からシーリング材で隙間を塞いでおくと、より安心できます。