ALCパネルについて
見た目は軽石のようでコンクリートとは思えないほど軽い板状の外壁材で高温高圧養生処理して作られた「軽量気泡コンクリート」(正式には「 Autoclaved Lightweight aerated Concrete」)と呼ばれる建築資材になります。
幅600mmが標準で、厚さが75mm以上の厚形パネルと50mm以下の薄形パネルの2種類があり、厚形パネルは主に鉄骨造の住宅・ビルなど、薄形パネルは鉄骨または木造の戸建住宅など構造や規模に使い分けられています。
ALCパネルの外壁はパネルとパネルを縦横に繋合わせて1つの壁になっており、継ぎ手部(ジョイント部)は水分等の浸入防止のためのシーリング材を充填してあります。
ALCパネルは表面・断面には気泡穴がたくさんあり(多孔質)、中には防錆処理を施されたラス網・鉄筋が入っており、
デザイン性に優れた意匠パネルなどの種類も豊富です。
ALCパネルは直線的なボードを繋ぎ合せて外壁を造りますので、R形状などのデザイン性ではモルタルのような自由度はありませんが、
- 多孔質のため断熱性に優れる
- 軽量
ALCパネルで起きる劣化の症状
ALCパネルの破損
磁器タイル仕上げを行っているALCパネルの破損例です。(磁器タイルを撤去し、破損状況を確認したところの写真は上の3.4枚目を参照)破損する原因はさまざま考えられますが、剥落の恐れがある場合は早急に補修を行う必要があります。
※今回の破損の原因は地震2005/3/20の福岡県西方沖地震によるものと思われます。
※地震によるALCパネル破損事例
こちらの写真も同日の地震によって破損した事例です。
ひび割れ(クラック)
躯体に歪などが生じ目地部分で動きを緩衝できない場合にALCパネルにひび割れが生じる事があります。巾が小さなひび割れはさほど気にしなくても大丈夫ですが、大きなひび割れは(0.3mm以上)漏水の原因となる恐れがありますので、適切な補修を行っておくと良いです。
磁器タイルの浮き・剥落
施工時のタイル裏面の張り付けモルタルの充填不足や「ドライアウト」と呼ばれる現象から、磁器タイルと外壁面の相互の付着力低下となり浮きが生じ、最終的にタイルの剥落に繋がります。
※「ドライアウト」張り付けモルタルの水分が急激に暑さで蒸発したり、外壁に吸収されることにより、水分不足となりモルタルの硬化不良を起こしてしまう現象
塗膜剥離
ひび割れからの水分の侵入・内部からの湿気により、「外壁」「塗膜」相互の付着力低下が引き起こされ、密着不良となり塗膜剥離が生じます。
このような状態では「美観」・「保護」の役割を果たすことができませんので、補修が必要になります。
ただし、表面のみの補修(浮いている塗膜を剥がして再度塗装)では、再度同じ症状が起きることも考えられますので、まずは塗膜剥離の原因を突き止め、その部分から改善を図ることが重要です。
シーリング 劣化
シーリング材は主に紫外線によってより劣化します。劣化の程度はシーリング材表層に紫外線から守る枠割の「塗膜」がある・無いによって変わり、塗膜が無いシーリング材むき出しの場合は、塗膜がある状態に比べ比較的早い年月で劣化し、役割を果たせなくなる事が多いようです。
また劣化の程度はシーリング施工時の施工品質にも左右されるところが多く、適正のシーリング厚が守られている場合と、そうでない場合とでは、表層に塗膜の有無に関わらず、早い年月で劣化してしまうこともありますので、建物の状態を確認する際には、シーリングの状態を確認しておくと良いです。
ALCは外部からの水の侵入を防ぐ役割をこのシーリング材が担っていますので、劣化している様子が確認できる場合は、なるべく早い段階で補修を行っておくと良いです。
塗膜劣化(チョーキング・白亜化)
外壁材を「保護」している塗膜劣化の症状になります。塗膜が紫外線によって劣化が進むと、変色・退色(元々の色相より白くなる)から始まり、徐々にこのような粉状に変わっていきます。
手で触ると白く付く粉状のものは、元は塗膜を形成していた樹脂・顔料になりまして、雨で流され、最終的には外壁から無くなります。写真のような段階まで劣化してしまいますと、塗膜による「保護」機能は失われていると考えられますので、保護層の再構築(塗膜の塗替え)が必要です。
下地処理について
ALCパネルの外壁は、継ぎ手部(ジョイント部)やサッシ廻り・その他のシーリング材の劣化・ALCパネルのひび割れから外壁内部に水の侵入が始まります。
特に継ぎ手部(ジョイント部)やサッシ廻り・その他のシーリング材の劣化によって漏水に繋がるケースが多いため、シーリング部の劣化が見受けられる場合は早期の段階で処置を行っておくと良いです。
ALCパネルの破損
2枚目の写真のような破損はALCパネルの交換を行う必要があります。
ALCパネルの補修方法は施工を行う人によってさまざまですが、ポリマーセメントで埋戻しを行い平滑にする方法が一般的です。動画ではボンドとポリマーセメントを併用して補修を行っております。 |
0.3mm未満の小さなひび割れ(クラック)
0.3mm以上の比較的大きなひび割れ(クラック)
磁器タイルの浮き・剥落
タイルの浮きが生じている箇所は剥落の危険があるため、浮いているタイルを撤去後・貼替る必要があります。 貼替を行うタイルは現在ある既成品のタイルから似た色を選んで行うため、周囲のタイルと色が合わないことがよくありますので、色違いを許容できる場合を除いて、タイルの焼き直し、またはタイルの塗装を行うなどして、周囲との違和感を無くしておくと補修箇所が目立つことなく綺麗に仕上がります。
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シーリング劣化
接着面の剥離
シーリング材の劣化
サッシ廻りは既存シーリング材を撤去後、新たにシーリング材を充填する「打替」で施工を行い、板間目地は既存のシーリングの上に新たなシーリング材を充填する「増打」で施工を行う事が一般的な施工方法になります。
ALCパネルのシーリング材はシーリング表面が塗装で保護されているいますので、比較的劣化していない場合が多いですが、次の塗装工事の時期(10~15年後)まで利用することを考えると、(上の3枚目の写真参照 築25年シーリング接着面の剥離)少々不安もありますので、サッシ廻りのシーリング材は新たに打替を行っておいたほうが安心です。 シーリングに関しましては個別のページを作成しております。 |
塗膜劣化(チョーキング)
この症状はコンクリートに限らず、塗装を行っている物全般に共通する塗膜劣化の症状です。手に付く粉状の程度や量にもよりますが、保護する機能が失われている状態となりますので、改めて塗装する必要があります。
具体的な施工例の紹介
日々更新を行っている工事日誌のALCパネルの施工事例です。毎日の作業内容を日報形式で詳しく書いております。
福岡市城南区Lコート ALCパネル塗装工事 |
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福岡市博多区H様邸 ALCパネル塗装工事 |
ALCパネルの塗装費用について
ALCパネルは塗装費用に加えてシーリングの費用が掛かります。モルタルと比較するとわかりやすですが、ALCの塗装費用はシーリング費用の分高額になりがちです。
「外壁面積150㎡での費用の比較」
同じ面積の場合、シーリングの費用が不要となるモルタルほうが、塗装費用は安くなります。
ALCパネルに適した塗装仕様について
下塗に微弾性フィラー、上塗に水性アクリルシリコン樹脂という組み合わせが現在では主流となっていますが、下地(既存塗膜)の劣化によっては微弾性フィラーを行う前にシーラー(プライマー)の塗布が必要となる場合などもありますので、外壁塗装を検討する場合は、施工業者と入念な打ち合わせを行った上で仕様を決めるようにすると良いでしょう。
ALCパネル塗装でナカヤマ彩工が採用している塗装仕様
「関西ペイント」下塗が必要な場合 | 下塗材 | 上塗材 | 備考 |
エポMシーラー | アレスホルダーG2 | アレスアクアシリコンAC2 | 水性 低汚染型 |
セラMシリコン2 | 弱溶剤 低汚染型 | ||
ムキフッソ | 弱溶剤 高耐久 低汚染型 | ||
「菊水化学工業」 | |||
キクスイ浸透性プライマーE | ソフトリカバリー | 水系ファインコートシリコン | 水性 低価格 |
ナカヤマ彩工がお勧めする塗装仕様
「水谷ペイント」下塗が必要な場合 | 下塗材 | 上塗材 | 備考 |
水系Wシーラー | リフレッシュフィラー | 水系ナノシリコン | 水性 標準 |
ナノコンポジットシーラーⅡ | ナノコンポジットW | 水性 高耐久 低汚染型 | |
リフレッシュサフェーサーエポ | ナノコンポジットW | 下地の劣化が著しい場合 | |
「エスケー化研」 |
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マイルドシーラーEPO | 水性ソフトサーフSG | 水性セラミシリコン | 水性 低価格 |
水性セラタイトSi | 水性 低汚染型 | ||
水性セラタイトF | 水性 高耐久 低汚染型 |