モルタルについて
砂(細骨材)とセメントと水を練り合わせたものになります。(これに砂利(粗骨材)が加わるとコンクリートに変わります)
現在、外壁の主流となっているサイディングボードは455×3030mmのボードで外壁を作り上げるため、直線的な仕上げしか出来ないのに対し、モルタルの場合は砂(細骨材)とセメントと水を練り合わせた物を塗付て外壁を作り上げるため、非常にデザインの自由性に優れ、思い通りの目地を入れたり、R形状の外壁や、アーチを架けたり、タイルを貼り付けたりと、さまざまな形状の外壁を作ることができます。
サイディングボードは工場出荷時に塗装を行っているため現場での塗装は行わないのに対し、モルタルは仕上げに現場での塗装が必要になります。サイディングに比べ仕上げ方法が非常に豊富であるため、塗料の種類や仕上げ方によってさまざまな風合いを作り上げることができます。
ただし、工場生産(製造~仕上まで一貫)のサイディングボードに比べ、モルタルの場合は全ての工程を現場で施工するため、作業者によって品質にムラができやすく、強度や耐久性・仕上げ塗装の性能等に後々問題が生じるなど、一定の品質を保つには施工時の品質管理が重要になります。
意匠性に優れるモルタルではありますが、何らかの不具合(ひび割れ、漏水、浮き、塗膜剥離等)が起こるリスクは、サイディングボードよりも少々高くです。
モルタルで起きる劣化の症状
ひび割れ(クラック)
モルタルの乾燥収縮から起こるひび割れと、躯体の歪などから起こるひび割れの2通りあります。 違いは前者は非常に軽微なひび割れ(ヘアークラック)、後者は比較的大きなひび割れとなります。ひび割れの選別は施工業者の判断基準によるところが多いですが、主にクラックスケールでひび割れの巾を計測し、0.3mm(または0.5mm)未満のひび割れを軽微なひび割れ、0.3mm以上(または0.5mm以上)のひび割れを大きなひび割れとする場合が多いです。特に注意すべきひび割れは大きなひび割れです。漏水リスクが高くなりますので、 簡易的な補修ではなく適切な補修を行うことが好ましいです。
また大きなひび割れは外壁内に水が侵入し てしまうことになるため、外壁内部にある構造材などの木材の腐食に繋がります。構造材 が水に濡れた状態、または湿った状態が続くことは良い状態ではありません。柱等の木材の腐食や白蟻の被害、室内への漏水の原因となりやすいため、早期に補修を行うことが望ましいです。
漏水による構造材の腐食 漏水+白蟻被害
モルタルの浮き
モルタルと躯体はラス(メタルラス)という金属製の部材を介し、タッカーと呼ばれる金属製の針によって固定をされているのですが、ひび割れから水が侵入することにより、ラス、及びタッカー(固定部材)の腐食が進行してしまうと、モルタルと躯体の固定がきちんとできなくなることから結果として浮きが生じてしまいます。
タッカー針とラスによってモルタルは躯体に固定されていますので、タッカー針の腐食=モルタルの浮きとなってしまいます。
モルタルの剥落
浮きが生じている箇所は外部要因(地震等の揺れなど)が加わりると剥落する可能性があります。また固定部材(ラス・タッカー針)腐食が著しい場合などは、外部要因が加わらなくとも自然落下してしまうこともありますので、注意が必要です。
大規模の剥落・小規模の剥落にかかわらず、外壁材の落下は重大な事故に繋がる恐れがありますので、早期にきちんとした修繕を行っておくと安心です。
塗膜剥離
ひび割れ等からの水分の侵入や内部からの湿気により、「外壁」「塗膜」相互の付着力低下が引き起こされ、密着不良となり塗膜剥離が生じます。
このような状態では塗装本来の役割となる「美観」・「保護」の役割を果たすことができませんので、補修を行う必要があります。ただし、表面のみの補修(浮いている塗膜を剥がして再度塗装)では、再度同じ症状が起きることも考えられますので、まずは塗膜剥離の原因を突き止め、その部分から改善を図ることが重要です。
モルタルの下地処理について
外部から侵入する水分は外壁材の劣化(ラス腐食による外壁の浮きの発生)、室内への漏水(構造物の腐食)に繋がりますので、水の侵入口となるひび割れの処理は適切に補修を行う必要があります。
※特に巾の広いひび割れは注意が必要です。
0.3mm未満の小さなひび割れ(クラック)
0.3mm以上の比較的大きなひび割れ(クラック)
モルタルの浮き
浮きが生じている外壁は簡易的な補修方法を除いて、撤去・復元するしか方法がありません。またモルタル撤去後の下地の状態にもよりますが、防水紙(ルーフィング)・ラス・モルタルで済む場合と、下地材からやり直す場合がありますので、浮きが確認できる場合は、前者の補修(防水紙(ルーフィング)・ラス・モルタル)で済むように早期に行っておくと良いです。 |
塗膜剥離
浮いた塗膜や脆弱な塗膜はケレンを行い綺麗に撤去・清掃後、ポリマーセメントで平滑に補修を行います。 補修工程は「脆弱な塗膜の除去→段差修正」で一応補修は完了となりますが、段差修正後に周囲と同様の模様付けるパターン調整(肌合わせ)まで行っておくと、補修箇所をより目立たなく仕上げる事が可能です。 塗膜剥離は起きた原因が何かによって再度剥離することも考えられますので、表面的な補修のみ行うのではなく、他に原因があるような場合は、その箇所から根本的に補修を行う必要があります。 パターン調整の詳しい様子を知りたい方 → 工事日誌内記事 パターン調整(肌合わせ) |
具体的な施工例の紹介
日々更新を行っている工事日誌のモルタルの施工事例です。毎日の作業内容を日報形式で詳しく書いておりますのでご参考下さい。
福岡市西区T様邸 モルタル壁塗装工事
外壁仕様 / 水性1液形ハルス複合セラミックシリコン樹脂 |
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福岡市東区T様邸 モルタル壁塗装工事
外壁仕様 / 水性1液形アクリルシリコン樹脂 |
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以下はモルタルではなくPC(プレキャストコンクリート)の事例ですが、下地処理の様子を詳しく書いています。 | |
福岡市早良区M様邸 PC(プレキャストコンクリート)・屋上防水塗装工事 |
モルタルの塗装費用について
劣化の症状が軽度の場合は上記で紹介したような補修を行わなくて済む場合が多いため、下地補修費用が掛からず塗装費用のみで行うことが可能です。
サイディングボードやALCパネルの外壁の場合では塗装費用と合わせてシーリングの費用が掛かりますが、モルタルはシーリング費用が掛からずにメンテナンスを行えるため、非常に優秀な外壁材と言えるでしょう。
「外壁面積150㎡での費用の比較」
同じ面積の場合、シーリング費用が不要となるモルタルほうが工事費合計は安くなります。
ただし、これはあくまで「軽度」の劣化に限る場合で、「重度」の劣化の場合はサイディングボードやALCなどのシーリング費用以上の補修費用が掛かってしまうことも十分に考えられます。
上記の例は補修費用に控えめな金額を入れているため、差額はあまり感じられないように思えますが、下の写真のように特に劣化が進んだ状態では、かなりの補修費用を覚悟しなければならにため、この事を念頭において早めの対策を行っておくことをお勧めします。
モルタルに適した塗装仕様について
以前(15年程度)までは、下塗にシーラー、上塗にアクリル樹脂単層弾性という組み合わせが主流でしたが、現在は下塗に微弾性フィラー、上塗に水性アクリルシリコン樹脂という組み合わせが主流になっています。この仕様の特徴は、旧塗膜表面の微細なひび割れ、巣穴などを下塗材1回塗りでカバーできることに加え、上塗材を目的(高耐久・低価格・低汚染など)にあわせ選択することも可能になります。
下地(既存塗膜)の劣化によっては微弾性フィラーを行う前に、シーラー(プライマー)の塗布が必要となる場合などもありますので、外壁塗装を検討する場合は、施工業者と入念な打ち合わせを行った上で仕様を決定すると良いでしょう。
モルタル塗装でナカヤマ彩工が採用している塗装仕様
「関西ペイント」下塗が必要な場合 | 下塗材 | 上塗材 | 備考 |
エポMシーラー | アレスホルダーG2 | アレスアクアシリコンAC2 | 水性 低汚染型 |
セラMシリコン2 | 弱溶剤 低汚染型 | ||
ムキフッソ | 弱溶剤 高耐久 低汚染型 | ||
「菊水化学工業」 | |||
キクスイ浸透性プライマーE | ソフトリカバリー | 水系ファインコートシリコン | 水性 低価格 |
ナカヤマ彩工がお勧めする塗装仕様
「水谷ペイント」下塗が必要な場合 | 下塗材 | 上塗材 | 備考 |
水系Wシーラー | リフレッシュフィラー | 水系ナノシリコン | 水性 標準 |
ナノコンポジットシーラーⅡ | ナノコンポジットフィラーN | ナノコンポジットW | 水性 高耐久 低汚染型 |
「エスケー化研」 |
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マイルドシーラーEPO | 水性ソフトサーフSG | 水性セラミシリコン | 水性 低価格 |
水性セラタイトSi | 水性 低汚染型 | ||
水性セラタイトF | 水性 高耐久 低汚染型 |
下塗材の塗装方法によっては模様を付けた仕上がりにすることも可能です。
この他には塗膜に弾力性を持たせ、表面にひび割れを生じさせにくい複層弾性塗材や高弾性塗材など、防水を目的とした場合に適した仕様などもあります。
以前(10数年ほど前)、防水目的で塗装を行う場合は単層弾性塗材という仕様が主流ではありましたが、この塗料は3年程度で弾力性が損なわれひび割れが生じやすくなっていたのに対し、高弾性塗材などの仕様では10年以上経過しても十分な弾力性を保つことが可能になります。
長期に渡って外壁面の防水を目的とする場合は、一般的な塗装仕様ではなく高弾性のような塗装仕様を検討されると良いのではないかと思います。
複層弾性塗材や高弾性塗材も目的(耐候性や低汚染性)にあわせて上塗材を選ぶことにより、塗膜にさまざまな性能を付与させる事ができますが、複層弾性や高弾性の仕様は通常の仕様よりも工程数が多い(下地処理1工程・高弾性5工程)ため、費用は一般的な仕様よりも少々高額です。
設計価格 比較
「一般的な仕様 微弾性フィラー+水性アクリルシリコン樹脂の設計価格」
エスケー化研 水性ソフトサーフSG(下塗材) 水性セラミシリコン(上塗材)
「高弾性アクリルシリコン樹脂仕様の設計価格」
エスケー化研 レナエクセレントA(中塗材) 水性弾性セラミシリコン(上塗材)