実際に工事に掛かっている費用がどの程度でどのような内容の工事が行われているかということを、皆様方にお伝えできれば、本当の意味で塗替え工事を検討する際に参考になるのではないかと思いましたので、今回、「塗装工事の実情」としてこちらに書いております。
※相見積時に見聞きする内容と今まで私が工事を行ってきた中で経験したことを元に書いておりますが、すべての場合に当てはまるとは限りませんのでその旨ご了承願います。
工事経歴 (独立~現在まで)
まず、簡単ではありますが私の経歴からお伝え致します。
独立当初、社員は私のみという形で塗装工事業を始めたのがきっかけとなります。前回の業者の種類では個人塗装店からのスタートになります。個人塗装店の時には元請工事はほぼありませんでしたので、基本的に下請け工事(一次下請け)もしくは孫請け工事(二・三次下請)というものが主になります。
下請工事は主に、TVのCMで良く見かける塗替え専門業者や、街中にある地元工務店・リフォーム会社の工事を行っており、施主と実際の工事を行う業者の間に、一つの業者(元請け業者)が入っているような請負形態です。孫請け工事というのは、施主と実際の工事を行う業者の間に、二つ以上の業者(元請け業者・塗装工事会社などの中間業者)が入っているような形態になります。
このような形で数年工事を行い、その後、法人格を取得、有限会社という形で塗装工事会社となり、ハウスメーカーや大手ゼネコンの仕事を請け負うことが出来るようになりました。ちょうどその時期から個人のお客様からの工事依頼を頂くようになり、元請業者として塗装工事に関わることが増えていくことになりました。
実際の塗装工事費用
ハウスメーカー
ハウスメーカーや大手ゼネコンの場合は下請工事という形で工事に関わることになります。以前は塗装工事会社が一次下請けという請負形態もありましたが、近年は塗料メーカーが保証のために一次業者として関わってくることが多くなり、施工業者は二次下請け、もしくは三次下請けという請負形態が主流になってきています。中間業者が増えれば増えるほど施主が契約した金額から実際に工事を行う業者にわたる費用は少なくなるのは当然のことです。最近は元請業者として工事を行うことも増え次第にわかってきたことではありますが、契約金額から50%~ほど引かれた金額が実際に行われる工事原価となります。例えば160万円で契約された場合は、それから色々と引かれまして良くて80万円程度、もしくはそれ以下が工事原価ということになります。
ハ ウスメーカーは各業種(仮設・シーリング・塗装・防水・金属・屋根)に分けて発注(分離発注)を行いますので、先 ほどの80万円(←良くて)からそれぞれの業種の費用が差し引きされ、実際の塗装工事の費用は40万程度。塗料費用はメーカーから支給もしくは購入するのですが、先ほどの費用から塗料費を差し引いた残りは、最終的に20~30万程度。この費用が塗装工事に掛けられる費用となり、そしてその中から工事業者は利益を残さないといけなことになるのです。
TVでCMを見かける塗替え専門業者
施主が契約する金額は各業者で違いがありますので一概にわかりませんが、聞くところによるとハウスメーカーと同じ程度の価格帯のようです。請負形態は一次下請けが最も多く、最悪でも二次下請けで工事を請け負うことができますが、ハウスメーカーに比べ中間業者が少ないにも係わらず、工事費用はハウスメーカーとさほど変わらないように思います。
最近とある業者からたまたま連絡があり、施工店契約の話を聞く機会があったのですが、以前私が工事を行っていた時よりも条件は悪くなっているように思います。また自社開発の塗料を使用する場合は一般的な塗料店には取り扱いが無いため、元請け業者からとなる業者から直接塗料を購入しないといけません。自社開発の塗料は一般的な塗料と比べた場合比較的高額となるため、塗料費用はそれなりに掛かるケースが多いように思います。
地元工務店・リフォーム会社
施主が契約する金額はハウスメーカーは「ネームバリュー」、CMで見かける塗り替え専門業者は「自社開発製品」の使用ということから工事費用は高額になることが多いですが、地元工務店・リフォーム会社はそのような「強み」はありませんので、工事費用はそれほど高額になることは少ないようです。また実際に工事業者にわたる費用もハウスメーカー等に比べ、多少は余裕があることが多かったように思います。
元請け業者となるハウスメーカーやCMで見かける塗り替え専門業者の場合では、工事業者が見積り提出→工事費決定→施工を行うという流れではなく、元請け業者の決定した費用にあわせて工事業者は施工を行うトップダウン方式が多いのですが、地元工務店やリフォーム業者の場合では、工事業者の見積書を元に施主に提出する見積り金額を算出しますので、ある程度は工事業者の意向が反映された費用で工事を行うことが可能となります。ただしあくまで「ある程度」です。一次・二次下請けであれ、下請けには変わりませんので、十分に費用があるというわけではありません。塗装工事だけを請け負う場合で50~60万程度、仮設から全てを請け負う場合で70~80万程度が工事業者が請け負う費用となります。
契約金額と実際の工事費用
それぞれの業者の工事を行う場合実際に工事を行う業者は、請負形態は良くて下請け(一次下請け)、悪くて孫請け(二次・三次下請け)となります。元請けがいる以上、下請けでしか工事は行えないのは当然です。元請け業者の経費・利益を差し引いた残りが工事業者にわたるというのも請負形態からすれば、またこれも当然です。
しかし、工事の内容は工事費総額ではなく、工事業者にわたった費用で行われた内容がその工事の価値であり、本来の工事費用(工事原価)となりますので、その点を今一度再確認しておくと業者を選ぶ見方がまた変わってくるのではないかと思います。
180万で契約しても、実際に行われる工事費用(工事原価)が80万であれば、その工事は80万の工事。
120万で契約しても、実際に行われる工事費用(工事原価)が80万であれば、その工事は80万の工事。
どちらも契約金額こそ違いますが、行われた工事内容は80万円なのです。