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プレキャストコンクリート(PCa)の塗装について

PC

プレキャストコンクリートについて

工場生産した鉄筋コンクリートパネル。現地で組み立て・設置を行うために、施工品質に左右されずムラの無い高品質の外壁を作ることが可能です。プレキャストコンクリートパネル(PC版)自体はコンクリートであるため鉄筋コンクリート造(RC)同様に非常に強度的にも優れた外壁材となりますが、接合部はシーリング収めとなるため、シーリングからの漏水に対するリスクは鉄筋コンクリート(RC)よりも高くなります。
PC版PC版同じPC造の建造物である高層ビルとは違い、戸建の場合は全てPC版で建築されることは少なく現場打ちコンクリートと併用して建築するため、プレキャストコンクリートパネル特有の劣化症状に加え、鉄筋コンクリート(RC)と同様の劣化症状も生じます。劣化の状況に応じてそれぞれに適切な処置を行うことが、戸建・PC造においては重要です。
PC造

プレキャストコンクリートで起きる劣化の症状

爆裂・欠損

爆裂

躯体中の鉄筋がコンクリートのひび割れ、中性化(アルカリ性→中性)などが原因で、腐食し錆びることにより、堆積が膨張し周囲のひび割れを更に誘発させながら最終的に欠落させてしまう症状になります。特にコンクリートのかぶりが鉄筋に対して少ない(薄い)部分に良く見られます。

※この症状はプレキャストコンクリートパネルの劣化症状ではなく、主に現場打ちコンクリート部(スラブ)に見られる劣化症状になります。

「かぶり」とは
鉄筋コンクリ-トのかぶりとは(工事日誌内記事)
鉄筋コンクリート かぶり(Google検索)

ひび割れ(クラック)

ひび割れ

コンクリートの乾燥収縮から起こるひび割れと、躯体の歪などから起こるひび割れの2通りあります。 前者は非常に軽微なひび割れ(ヘアークラック)、後者は比較的大きなひび割れとなります。ひび割れの選別は施工業者の判断基準によるところが多いですが、主にクラックスケールでひび割れの巾を計測し、0.3mm(または0.5mm)未満のひび割れを軽微なひび割れ、0.3mm以上(または0.5mm以上)のひび割れを大きなひび割れとする場合が多いです。

特に注意すべきひび割れは大きなひび割れです。漏水リスクが高くなりますので 簡易的な補修ではなく適切な補修を行うことが好ましいです。

 

 

塗膜剥離

塗膜剥離

ひび割れ等からの水分の侵入や内部からの湿気により、「外壁」「塗膜」相互の付着力低下が引き起こされ、密着不良となり塗膜剥離が生じます。

このような状態では「美観」・「保護」の役割を果たすことができませんので、補修を行う必要があります。ただし、表面のみの補修(浮いている塗膜を剥がして再度塗装)では、再度同じ症状が起きることも考えられますので、まずは塗膜剥離の原因を突き止め、その部分から改善を図ることが重要です。

 

シーリング 劣化

シーリング劣化

シーリング材は主に紫外線によって劣化します。劣化の程度はシーリング材表層に紫外線から守る枠割の「塗膜」の有無よって変わります。塗膜が無いシーリング材むき出しの場合は、塗膜がある状態に比べ比較的早い年月で劣化し、早期に役割を果たせなくなる事が多いです。

劣化の程度はシーリング施工時の施工品質にも左右されるところが多く、適正のシーリング厚が守られていない場合は、表層に塗膜がある・無いに関わらず、早い年月で劣化してしまうこともありますので、建物の状態を確認する際には、シーリングの状態を確認しておくと良いです。

PC造は外部からの水の侵入を防ぐ役割をこのシーリング材が担っていますので、劣化している様子が確認できる場合は、なるべく早い段階で補修を行っておくと安心です。

塗膜劣化(チョーキング・白亜化)

塗膜劣化(チョーキング・白亜化)

外壁材を「保護」している塗膜劣化の症状になります。塗膜が紫外線によって劣化が進むと、変色・退色(元々の色相より白くなる)から始まり、徐々にこのような粉状に変わっていきます。

手で触ると白く付く粉状のものは、元は塗膜を形成していた樹脂・顔料になりまして、雨で流され、最終的には外壁から無くなります。写真のような段階まで劣化してしまいますと、塗膜による「保護」機能は失われていると考えられますので、保護層の再構築(塗膜の塗替え)が必要です。

 

プレキャストコンクリートの下地補修について

爆裂は剥落・欠落する恐れがあり、ひび割れ(クラック)やシーリングの劣化は漏水躯体内部の劣化に繋がるため、特に入念に補修を行う必要があります。

下地処理の重要性について

爆裂・欠損

爆裂爆裂は躯体内部にある鉄筋の腐食が原因です。補修方法はさまざまな方法がありますが、錆が生じている鉄筋の錆除去(ケレン)入念に行い、鉄筋の防錆処理、周囲のコンクリートの中性化を抑制する処置、ポリマーセメントで埋戻しという工程で行うことが多いです。鼻先(上の写真参照)などを補修する場合は、補修箇所の剥落防止の為にステンレス線を併用して補修を行うとより安心です。

0.3mm未満の小さなひび割れ(クラック)

ヘアークラック

ひび割れ補修巾が小さく再発の恐れがないひび割れは、シーリング材や微弾性フィラー(またはカチオンフィラー)をひび割れ内部にすり込み、ひび割れを埋めて補修を行います。

この工法はシール工法と呼ばれ主に表面のみの処理になりますので、再発の恐れがあるようなひび割れ、漏水の原因となっているようなひび割れなどは、費用の問題・時間的な問題・とりあえずの補修でOKなど特別な理由がない限りは、次に説明する工法で補修を行うほうが好ましいです。

シール工法について

0.3mm以上の比較的大きなひび割れ(クラック)

※写真はモルタルの事例です
クラック

Uカットシール材充填工法ひび割れに沿って外壁をU型(V型)にカットし、その溝内に動きに追従できるシーリング材を充填後、再度外壁表面を復元するUカットシーリング材充填工法で補修を行います。

Uカットシール材充填工法は、ひび割れが再発した際に内部に充填しているシーリング材の特性(弾力性により動きに追従する)により、外壁材の動きをシーリングの層で緩衝させることができるため、外壁内部に達する(外壁材を貫通する)ひび割れを表層のみのひび割れに留めることが可能です。

また、ひび割れの貫通を防ぎ表層のみに留めるということは、そのひび割れからの水の侵入を防ぐことができるため、漏水の原因となっているひび割れや、またその恐れがあるようなひび割れがある場合は、この工法で補修を行っておくとより安心です。

Uカットシール材充填工法について

塗膜剥離

塗膜剥離

塗膜剥離浮いた塗膜や脆弱な塗膜はケレンを行い綺麗に撤去・清掃後、ポリマーセメントで平滑に補修を行います。

補修工程は「脆弱な塗膜の除去→段差修正」で一応補修は完了となりますが、段差修正後に周囲と同様の模様付けるパターン調整(肌合わせ)まで行っておくと、補修箇所をより目立たなく仕上げる事が可能です。

塗膜剥離は起きた原因が何かによって再度剥離することも考えられますので、表面的な補修のみ行うのではなく、他に原因があるような場合は、その箇所から根本的に補修を行う必要があります。

パターン調整の詳しい様子を知りたい方 → 工事日誌内記事 パターン調整(肌合わせ)

 

シーリング劣化

シーリング材の劣化
シーリング劣化

PC版 シーリング

紫外線により劣化し弾力性がなくなった結果、PC版の動きに追従できなくなりシーリング材自体のひび割れが生じます。劣化したシーリング材は撤去した後に、再度シーリング材の充填を行う「打替」で施工を行う必要があります。

シーリングに関しましては個別のページを作成しておりますのでご参考下さい。

シーリング(コーキング)と塗装

塗膜劣化(チョーキング・白亜化)

チョーキング塗装全般に共通する塗膜劣化の症状です。手に付く粉状の程度や量にもよりますが、保護する機能が失われている状態となりますので、改めて塗装する必要があります。

具体的な施工例の紹介(プレキャストコンクリート)

日々更新を行っている工事日誌のプレキャストコンクリートの施工事例です。毎日の作業内容を日報形式で詳しく書いておりますのでご参考下さい。

早良区M様邸

福岡市早良区M様邸 PC(プレキャストコンクリート)改修工事
外壁仕様 / 水性1液形アクリルシリコン樹脂
屋上仕様 / アスファルト防水 機械固定式

工期 / H25.1.15 ~ H25.2.28
実働日数(人工)  / 35日間(68.75人工)

プレキャストコンクリート(PCa)の塗装費用について

劣化の症状が軽度の場合は上記で紹介したような補修を行わなくて済む場合が多いため、下地の補修費用が掛からず塗装費用のみで行うことができます。外壁にシーリングを使用している箇所がありますのでモルタルと比べると費用は掛かりますが、シーリング費用はサイディングボードやALCより少なくで済みます。

モルタルとサイディングボードの中間程度の費用が、プレキャストコンクリートに掛かる塗装費用です。

「外壁面積150㎡での費用の比較イメージ」 ※架設費用を除いた外壁塗装関わる項目の比較
費用比較ただし、これはあくまで「軽度」の劣化に限る場合で、「重度」の劣化の場合はサイディングボードやALCなどのシーリング費用以上の補修費用が掛かってしまうことも十分に考えられます。費用比較

プレキャストコンクリート(PCa)に適した塗装仕様について

下塗に微弾性フィラー、上塗に水性アクリルシリコン樹脂という組み合わせが現在では主流となっていますが、下地(既存塗膜)の劣化によっては微弾性フィラーを行う前にシーラー(プライマー)の塗布が必要となる場合などもありますので、外壁塗装を検討する場合は、施工業者と入念な打ち合わせを行った上で仕様を決めるようにすると良いでしょう。

プレキャストコンクリート塗装でナカヤマ彩工が採用している塗装仕様

「関西ペイント」下塗が必要な場合 下塗材 上塗材 備考
エポMシーラー アレスホルダーG2 アレスアクアシリコンAC2 水性 低汚染型
セラMシリコン2 弱溶剤 低汚染型
ムキフッソ 弱溶剤 高耐久 低汚染型
「菊水化学工業
キクスイ浸透性プライマーE ソフトリカバリー 水系ファインコートシリコン 水性 低価格

その他、ナカヤマ彩工がお勧めする塗装仕様

「水谷ペイント」下塗が必要な場合 下塗材 上塗材 備考
水系Wシーラー リフレッシュフィラー 水系ナノシリコン 水性 標準
ナノコンポジットシーラーⅡ ナノコンポジットフィラーN ナノコンポジットW 水性 高耐久 低汚染型

「エスケー化研」

マイルドシーラーEPO 水性ソフトサーフSG 水性セラミシリコン 水性 低価格
水性セラタイトSi 水性 低汚染型
水性セラタイトF 水性 高耐久 低汚染型

また下塗材の塗装方法によっては模様を付けた仕上がりにすることも可能です。
微弾性フィラー この他には塗膜に弾力性を持たせ、表面にひび割れを生じさせにくい複層弾性塗材高弾性塗材など、防水を目的とした場合に適した仕様などもあります。

以前(10数年ほど前)、防水目的で塗装を行う場合は単層弾性塗材という仕様が主流ではありましたが、この塗料は3年程度で弾力性が損なわれひび割れが生じやすくなっていたのに対し、高弾性塗材などの仕様では10年以上経過しても十分な弾力性を保つことが可能になります。
長期に渡って外壁面の防水を目的とする場合は、一般的な塗装仕様ではなく高弾性のような塗装仕様を検討されると良いのではないかと思います。

複層弾性塗材や高弾性塗材も目的(耐候性や低汚染性)にあわせて上塗材を選ぶことにより、塗膜にさまざまな性能を付加させる事ができますが、複層弾性や高弾性の仕様は通常の仕様よりも工程数が多い(下地処理1工程・高弾性5工程)ため、費用は一般的な仕様よりも少々高額です。

設計価格 比較

「一般的な仕様 微弾性フィラー+水性アクリルシリコン樹脂の設計価格」
エスケー化研 水性ソフトサーフSG(下塗材) 水性セラミシリコン(上塗材)
微弾性フィラー「高弾性アクリルシリコン樹脂仕様の設計価格」
エスケー化研 レナエクセレントA(中塗材) 水性弾性セラミシリコン(上塗材)
高弾性

 

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