部位別の塗装方法 屋根塗装「スレート」
屋根塗装「スレート」について
他の形状の屋根と違い棟に板金を使用しておりますので、その部位の処理が別に必要となりますが、工程こそ多いものの難易度で言えばさほど高くはなく、さほど問題なく塗装を行うことが可能です。
但し、屋根の上で作業を行いますので、滑落の危険があることを常に忘れずに、安全帯などの着用、滑落防止のための架設設置も含め、入念な安全管理を行った上で塗装をされることをお勧めします。
また、塗装後の濡れた瓦は非常に滑りやすくなりますので、屋根に上がる際には、必ず、屋根の状況を確認の上、作業を行うようにしてください。
塗装工程① 「鉄部下地処理 ケレン」
板金は錆が発生している場合と発生していない場合とありますが、ケレンの程度が変わるだけになりますので、どちらも同じ工程で塗装可能です。
錆が発生している棟 | 錆が発生していない(または、少ない)棟 |
棟を固定している釘が浮いている場合がありますので、
このような場合は打ち込んでおきます。
釘が効かないこともありますので、そのような場合は別の場所に打ち込み直すか、ビスで固定し直しておくと良いでしょう。
次に表面の錆の除去。
棟板金に錆が発生していない場合は、サンドペーパーやマジックロン、スコッチブライトで表面の目荒らしを行う程度で良いです。
写真のように全体的に錆が発生している場合では、電動工具で錆の除去を行うと効率良く作業が出来ます。
電動工具で錆の除去を行う場合は、軍手の使用は当然のこととなりますが、安全のため保護メガネなども付けて行ったほうが良いです。
塗装工程② 「鉄部下地処理 素地調整剤」
電動工具で錆の除去を行っても完全に錆をとり除くことは難しいため、表面に錆安定剤などの素地調整剤を塗布し、残っている錆の処理を行います。
大日本塗料「サビシャット」
この素地調整材は、A液とB液を規定の量混ぜあわせて使用するタイプの製品となります。
混合比率はA液2.0kg:B液0.4kg=5:1となっています。
ケレンの際に発生した粉塵等を綺麗に清掃後、
規定量で混合を行った素地調整材を塗布します。以上で棟板金の下地処理の工程は終了。
塗装工程③ 「鉄部 下塗」
素地調整材の塗布を行った場合はその上から、行っていない場合は、表面のケレン(目荒らし)後に錆止の下塗材の塗布を行います。
始めに打ち直した釘の部分は再度抜けることがないように、シーリングで釘頭を塞いでおくと良いです。
シーリングを行うことによりこの部分からの水の侵入を防ぐことが出来るようにもなりますので、棟板金の下地・木の腐食防止にもなります。
以上で棟板金の下塗は完了です。
ケレンの際にゴミや埃など粉塵が発生しますので、以上までの工程は高圧洗浄前に行なっておくと良いですが、洗浄前の汚れた屋根の上は滑りやすくなっておりますので、足元に不安がある場合は、先に高圧洗浄を行い、滑らない状態で作業をすることをおすすめします。
先に高圧洗浄を行っている場合は、ケレンなどで発生した汚れや埃を、再度清掃する必要がありますが、その点だけを除けば洗浄前・後どちらでも問題はありません。
塗装工程④ 「高圧洗浄」
瓦表面のコケや汚れ、脆弱な塗膜の除去を行います。
屋根の洗浄は家庭用の低圧(7Mpa程度)の洗浄機でも洗うことは可能ですが、低圧の場合は洗浄の時間が非常に掛かるため、高圧(15Mpa~20Mps)の洗浄機を使用出来る場合はそちらの洗浄機を使用したほうが、作業効率、洗浄の程度が良いです。
高圧の洗浄機は、少々機械が大きい+重量(特に20Mpaのものは80kg程度)あるため、運搬・積み下ろし等を考えると使用できる方は限られてしまいますが、リースで借りることが出来ますので、近くの建設機械のリースを行っている店などを探してみると良いと思います。
費用は10~15Mpa程度の洗浄機一式で4000~5000円/日程度だと思います。
洗浄の際に使用するガン先のノズルは、通常よくある扇型のタイプのものではなく、
トルネードタイプのものを使用したほうが作業効率が良いです。
瓦は洗浄をすると非常に綺麗になります。
表面の塗膜が脆弱な場合は、洗浄を行うとある程度除去することも可能です。
屋根を洗浄する際には、可能であれば樋の内部の洗浄も行っておくと良いです。
建物周囲の状況によっては、樋がプランターのようになっていることもありますので、
可能であれば樋の内部の洗浄も行っておくと良いと思います。
瓦を綺麗に洗うことは、高級な塗料を使用するよりも重要ですので、可能な限りキッチリと洗浄を行っておくと良いです。
塗装工程⑤ 「瓦 下地処理」
今回、行程の順番は高圧洗浄の後に行っておりますが、漏水が起きているような状況では高圧洗浄の前に行ったほうが良い場合もありますので、その時の状況によって、この工程は高圧洗浄の前・後を決めると良いと思います。
瓦が割れている箇所を
シーリングや接着剤(ボンド)で補修を行います。
「接着剤(ボンド)」コニシ クイックメンダー
5分程度で硬化する超速乾性のボンドです。
1:1で混ぜ合わせて使用しますので適量をヘラ等に出し、
混ぜ合わせます。
夏場などは僅かな時間で硬化してしまいますので、使用する場合は少量ずつ混ぜ合わせて使用すると良いです。
通常の割れでは無く、大きく瓦が割れているような場合は、
自分で修理をすることは困難になりますので、
屋根業者さんに修理を依頼したほうが良いでしょう。
前回の工程、高圧洗浄で綺麗な状態になっている瓦ですが、
洗浄の際、洗い残しでコケや汚れが残っている場合がありますので、
ワイヤーブラシで除去を行い、
発生したゴミなどは、再度清掃しておきます。
以上で下塗前の準備は完了です。
塗装工程⑥ 「下塗」
水性・弱溶剤・1液形・2液型と様々な種類がありますが、それぞれの塗料で施工の際の注意事項が違いますので、施工の際にはそれぞれの施工要領・注意事項を確認したほうが良いです。
今回は弱溶剤2液形の下塗材を使用する場合の説明となります。
「屋根 下塗材」 水谷ペイント マイルド浸透シーラー
「施工要領」
- 希釈せずに使用する
- 主剤・硬化剤、混合後は7時間以内(23℃)に使い切る
- 塗り重ねの時間は2時間以上3日以内
「注意事項」
- 15年以上経過した基材等、表面が劣化している場合は、下塗は2回塗り
となっていますので、これらの点を踏まえてから下塗の作業に取り掛かります。
棟板金などの取り合いは刷毛で塗布を行い、
それ以外の部分はローラーで塗布。
瓦自体の劣化が少なく、瓦の重なり部分の隙間がほとんど無いような良好の状態の場合は、ローラーで塗装してしますと瓦の重なり部分の隙間が塗料で塞がってしまう恐れがありますので、重なり部分のみ刷毛で塗布を行ったほうが良いと思います。
瓦の劣化が進んでおり、すでに反りが発生しているような場合は、
塗料で塞がる恐れがないためローラーで重なり部分を塗布することも可能です。
今回の場合では注意事項にありましたように、表面が脆弱な状態でしたので、下塗は2回塗布という形をとっておりますが、
さほど表面が劣化していないような場合では、下塗は1回塗りでも問題はありません。
塗装工程⑦ 「縁切り」
瓦の重なり部分が塗料によって塞がってしまうことを防止する工程になりまして、このような専用の縁切り材を、
瓦の重なり部分に挿入することにより、
重なり部分の隙間を確保する工程となります。
この縁切りは重なり部分に隙間を設けるための工程になりますので、すでに十分な隙間(塗料によって塞がる恐れがない程度の隙間)が屋根面全体にある場合などは、
改めて縁切り材を挿入する必要がないと思いますので、この工程は不要となります。
縁切り材を使用する場合は、瓦の端から15cm程度離れた位置に挿入するようします。
塗装工程⑧ 「上塗」
下塗材同様、それぞれの塗料で施工の際の注意事項が違いますので、施工の際にはそれぞれの施工要領・注意事項を確認したほうが良いです。
今回は弱溶剤2液形の上塗材を使用する場合の説明となります。
「屋根 上塗材」 水谷ペイント パワーシリコンマイルドⅡ
「施工要領」
- 刷毛・ローラー塗りの場合、希釈は1缶に対して2~4L
- 主剤・硬化剤、混合後は5時間以内(23℃)に使い切る
- 塗り重ねの時間は4時間以上10日以内
- 希釈には専用シンナーを使用
となっています。
下塗~上塗までの工程は数日にまたいで行うことが多いです。
翌日以降、次の工程を行う場合には屋根表面が汚れている場合が多いですので、各工程を行う前にはその都度清掃は行いながら作業を進めていくと良いでしょう。
下塗同様に棟板金の取り合い部分は刷毛で塗布を行い、
それ以外の部分はローラーで塗布を行いながら塗り進めていきます。
唯一違う点は、先ほどの下塗では瓦の重なり部分はローラーで塗布しておりましたが、上塗では重なり部分は刷毛で塗布を行いながら塗り進めていきます。
上塗は下塗とは違い塗料の粘度が高いため、下塗では塞がらなかったような瓦の隙間も、上塗では塞がってしまう恐れがありますので、上塗を行う際はこの重なり部分は刷毛で塗布を行ったほうが良いと思います。
塗り方は重なり部分を塗布した後に、
ローラで表面を塗布。
このように塗り進めて行くと良いと思います。可能な場合は瓦の小口や唐草と呼ばれる板金部分も、一緒に塗装を行なっておくと良いでしょう。
この上塗は2回塗りとなりますので、上塗1回目が済んだ後に、塗り重ね可能時間が経過後、再度全体の塗装を行いましたら、
以上で屋根の塗装は完了となります。